女の子宮は疼かない

 

ある夜、地方に住む男友達が電話をかけて来た。

 

あまり友達と電話をする方ではないので何事が出来せしやと身構えたのだが、彼はどうしても聞きたい事があると言う。当時、彼は転職活動中だったのでそれに関する事かなと思ったのだが、真剣なトーンで彼はこう切り出した。

 

「女のコってどんな時に子宮が疼くの?」

 

私がまず最初に感じた事は、”気持ち悪っ”でも、”いきなり何”でもなく、

 

”てめぇ今まで女扱いなんて皆無だった癖にこんな時だけ女のコとか言ってくるんじゃねぇ”だった。こいつは20kg近い土釜を私に2階から地下3階まで運ばせた前科がある。

 

彼は童貞ではないのだが片思い中に何もかもわからなくなり、とりあえず女の気持ちを知りたくなったのだと言う。そして白羽の矢が突き刺さったのが私だった。私に突き刺さった矢を引き抜いてそいつの腹にブッ刺してやろうかと思ったがなんとか持ち堪える。

 

女の子はどういう時にときめく?ならまだいい。子宮って。エロ漫画の読み過ぎだよ、とやんわり告げた自分を褒めてあげたい。あと多分私の方がエロ漫画読んでるし。

 

しかし彼は女性は皆子宮が疼くものだと信じて居たらしい。疼いているのは殺意である。

 

毅然とした口調で「女の子宮は疼かない」と言おうとしたが、なんか『ダイヤモンドは砕けない』みたいだなと思ってしまいやめておいた。

 

胸のトキメキを胸キュンと表現して久しいが、そのキュンは子宮にも当てはまるのだろうか。正直よくわからない。私はガチムチマッチョの逞しい男性が好きなので抱かれてぇ~!という男性が居た時、ひょっとして無意識のうちに子宮が疼いていたのかもしれない。

 

汚い絵ヅラだ。というか子宮すら支配下に置けない分の悪さに我ながら辟易する。いつの間に子宮はサイレントモードになっていたのか。

 

最終的に彼には、「子宮が疼くの正解がわからないから答えようがない。あと次会ったら殺す」とだけ告げた。

 

 電話を切った後私は、とりあえずGoogleの検索フォームに【子宮 疼く】と入力した。どこに出しても恥ずかしくないゆとりと思わせる見事なインターネットへの懐疑心の無さである。

 

すると結構な女性が子宮の疼きを経験しているらしい。それPMSだろと毛布をかけたくなるような例もあったが。やはり私の子宮は出勤を拒否しているようだ。だからといって、イイ男がいないんだも~んと頬を膨らませる(その頬は私が叩き割る)女にはなりたくない。毎日想像妊娠してるくらいの方が楽しそうだし。

 

改めて考えると、最近は何をしていても会社での事を思い出し子宮と言うよりは胃がギュンギュンに痛むのでそれも要因だろうか。子宮も上の奴=胃があまりに武者震いを繰り返すのでビビッてしまったのだ。

 

 早く想像妊娠し、産休を取り、涎掛けとおしゃぶり装備のテディベアを抱きながらニコニコと職場復帰したいものだ。

 

名前は未来への希望を込めてデスサイコキルユーサイコパス太郎、だ。私にはデスサイコキルユーサイコパス太郎の成長を岸辺露伴と温かく見守っていく未来が待っているのだ。

 

そのためにも、一刻も早く敏感な子宮を取り戻すためGoogle検索フォームに【子宮 マナーモード 解除】と入力してみたが有益な情報は見つからなかった。全信頼を寄せていたインターネットに裏切られたのでもう明日は会社を休む。