異人さんに連れられて

一人暮らしの玄関は狭い。大体どこもそうだろう。靴箱はその家々によって違うと思うが、うちには8足は入る靴箱がある。買ったものではなく元々付いていた。

 

現在9足の靴を所持しているが、藍色のスニーカーを除いて全て黒だ。

 

具体的に紹介すると、

 

まず黒いハイヒールが2足(就活の時に買った奴と母からのプレゼント)

 

ウェッジソールの黒いサンダルが1足(サンダルを壊す天才なので一夏使い切り)

 

ハイカットスニーカーのようなブーツが1足(真っ黒。パッと見男物)

 

本革のショートブーツが1足(これも母からのプレゼント)

 

黒のファーサンダルが1足(クリスマスに自分用プレゼントで)

 

ローヒールのパンプスが1足(歩けるパンプスと名高い某メーカーの)

 

そして2ウェイタイプのサンダルが1足(安い店で買った。8cmくらいあるウェッジソール)

 

こんな感じだ。上記の通り、私はサンダルを壊す天才なのでサンダルはほぼ一夏限りの付き合いだ。次の夏までは持たない。

 

実はサンダルに限らず、20歳の時、あるアパレルショップでユーズドのブーツを買ったら10日と経たずに壊れてしまった事がある。ユーズドだし返品保証期間内に壊れることもあるかもな、とお店へ出向き違うユーズドの靴と交換してもらった。

 

そうしたら、それもまた壊れた。10日以内で。

 

何も私は毎日2万キロジョギングしているとか積極的に延髄斬りを決めているとかそんな生活をしていた訳ではない。ごく普通の、電車通学の大学生だった。

 

もう一度店に行き壊れた旨を伝えると、スタッフは明らかに疑いを持った目で私を見、返金を渋った。勿論返品返金期間内だ。要は、わざと壊したんじゃないかと疑われてしまったのだ。

 

今ならそれこそ「シャオラッ!!!!!」と雄たけびを上げてそいつに延髄斬りをお見舞いし、Yahoo!ニュースデビューを飾っていたと思う。

 

しかし当時は返品を繰り返す嫌な客として見られたことがショックだった。ので、「交換も返金も諦めるが自分はもうこの店は二度と利用しない」と言ってその場でメンバーズカードをレジに置いて帰った。今でもそのお店は新宿にあるが行っていない。

 

今となってはそんなこともあったな~と思えるが、1万ちょっと払って10日で壊れた靴の交換も返金も受け入れてもらえなかったのだ。地味だがこの恨みは根深い。

 

安い靴がすぐ壊れるとは限らないし、高い靴(少なくともバイト学生には高かった)が長持ちするとも限らない。

 

上で挙げた靴たちの値段は1000円~2万円近いものまでバラバラだが、どれもこれも気に入っている。

 

それにしても改めて書き出すと本当に黒い靴しか持っていない。どうして黒い靴が好きなのだろう。

 

「肌が白く見える」「血が目立たない」「サツが写真や映像からゲソ(履物の隠語)を調べた時に黒の靴は特徴が目立たない」など理由は様々だが、結論はなんとなく好きだからだ。それだけである。”原材料、コーヒー。以上。”のCM並みにそっけない。

 

カラフルな靴も素敵だと思う。しかし私は黒が好きなのだ。黒以外ならパイソンレザーの靴が好きだ。服も黒が多いしアクセサリーも金色のものばかりなのでなんというか、タイの下っ端ヤクザの女みたいになる。

 

考えてみると、黒い靴という存在の、妙に危険な感じが好きなのかもしれない。素敵な靴は素敵な所に連れて行ってくれると言うが、黒い靴は奇妙で不思議な場所に連れて行ってくれる気がする。

 

横浜には【赤い靴】という観光名所周遊バスがある。童謡の赤い靴を由来とした可愛らしい見た目のバスだ。【黒い靴】という名前だとなんかもう囚人収容バスみたいだもんな。そういう所が好きなんだ、多分。

 

9月に入り、今年の夏を共に過ごしてくれたサンダル(壊れかけ)ともお別れが近づいてきた。また新しい黒い靴が欲しい。できれば何度延髄斬りを決めても壊れない丈夫な奴が。