囁いてLOVE止めないでパッション

 

耳が弱い。というか、大半の人類は耳が弱いのではなかろうか。だって人体の急所だし。

 

逆に、耳がめちゃくちゃ強い人ってなんか滑稽だ。たとえ及川光博に耳元で吐息交じりのベイベーを囁かれても眉一つ動かさない。とんだ修験者である。

 

私はツイッターでたまにシチュCD(※声優が立体音響を使って恋愛ドラマを演じてくれる崇高な文明)の話をする。シチュCDは媒体が音声であるから、とにかく徹頭徹尾エロい音を聞かせてくるのだ。

 

私はいつも仰向けで胸の前で手を組んだ臨終スタイルでそれを聞くのだが耳元でどんなエロい音を出されようが動じない。いや、正しくは動じなくなってしまった、だ。

 

そう、度重なる試練を経て我もまた高僧となりつつあるのである。

 

初めてそういう作品を知ったのは成人してすぐくらいで、好きな男性ライターがブログで紹介していたのだ。BL作品も紹介する人だったのだが「とにかくこれはヤバい」とゴリ押し。なんとなく視聴ページを開いた。

 

吃驚した。そりゃもう吃驚した。

 

決してそれにムラムラした訳ではないのだが(特殊性癖系だったのでむしろドン引きしてしまった)、とんでもない扉が開いたのは確かだった。

 

それから好きな声優や面白そうなストーリーのシチュCDを集め色々と聞いている内にすっかり慣れてしまい、今では”この役者さんって射精する(演技の)時、声上擦るよなぁ”とか考えている。汚れっちまった悲しみに。

 

 本気でときめく恋愛ドラマも多数存在するし、コメディタッチな話も静かなラブストーリーも何でもあるのだが、最近はなんつうか聞く側、つまり私の方に変化が訪れている。

 

現在のシチュCD拝聴時の私は例えるなら、カップ酒を飲みながら猫の交尾を見ているおっさんである。もしくはヤニを摂取しながら少年野球を眺めているおっさんか。どっちにしろおっさんなのだ。ワイはオッサンや……プロゴルファー猿や!

 

相手の男が「お前な……俺だってオトコだぞ……?」と言おうものなら\ちんこに負けんなー!/とヤジを投げそうになるし、避妊具を付ける描写があるものには\わかっとるやんけワレー!!/と喝采を送りたくなる。

 

ちなみに数年前、うとうとしながらとあるCDを聞いていたら静かに語り掛けて来ていた男がいきなりヒロインの携帯電話をブン投げたので大層ビビった。オッサンだってビビるときはビビるのである。

 

その男は嫉妬から携帯を投げたようだった。素晴らしい勢いの破壊音からして、確実にオーバースローだったと思う。

 

シチュCDは良い声の男が甘い台詞を囁いてくれるだけではない。こういう危険と隣合わせなのである。

 

しかしながら最近はあまり聞けていない。「なんかあるかな」と好きな声優の名前で最新作はないか調べたら、麻薬捜査官のヒロインが情報屋のキャラクターとあれやこれや繰り広げる作品がヒットした。

 

確かに私は危険と隣合わせと書いたが、いきなりドラッグはパンチが効きすぎやしないか。恋する乙女はマフィアだろうが極道だろうが関係無し……そういう逞しい心意気、嫌いじゃない。

 

数多の戦を潜り抜けたオッサンの耳とオッドアイのドラッグ情報屋のイケメンのバトルは11月下旬に幕を切って落とす。今から走り込みとかしておくわ。