潰えた夢へのレクイエム

ラノベのようなタイトルで申し訳ない。

 

子供の頃は未来への夢で溢れていた。あれになりたい、こんなことしたい、そうなったらいいなぁ、なんて幾つも夢を持っていた。

 

今現在ではそれが”現実逃避”と”妄想癖”にクラスチェンジし、欲望の肥大化は留まることを知らない。そして夢は夢でも夢小説への情熱に溢れ溺死しそうな毎日だ。ハッピーイェーイ。

 

考えてみると、成長と共に自然と消滅した夢はいくつあるのだろう。

 

まず、小さいころから将来の夢が転々としていた。ロールパンナちゃん、お嫁さん、ケーキ屋さん、美容師、先生……教員免許は取ったが結局教師にはならず普通のOLになった。

 

たぶん教員になったら過労死していたし毎日5000人くらい殺してたと思う。そんな忍耐の女が教員になっていいはずがない。我ながら英断だった。それがたとえ4年の月日と親の金と40近い単位の上に成り立っていても、だ。

 

ロールパンナちゃんになる夢は今でも諦めていないが、生憎私はクロワッサンの方が好きなのだ。生半可な気持ちで襲名できるほどロールパンナ稼業は甘くない。パン自体はほんのり甘いがそういう事じゃないのだ。

 

お嫁さんだって諦めてはいない。私を嫁に迎え地獄のような日々を過ごしたいと言う勇者が居ればいつでも迎え撃つ。

 

激闘の末、私が咄嗟に出したパスを受け取った相手が左手は添えるだけのシュートを決めて見事山王工業に逆転勝ち。無言で私と相手がハイタッチを決めた所から結婚生活は始まる。もう全然子供の頃の夢とは関係ないが流川が好きだ。でも結婚するなら牧さんが良い。顔は藤真が一番好みだ。

 

ケーキ屋さんはどうだろう。10歳かそこらの時に祖父に「パティシエになりたい」と言ったら「じゃあ秋田に土地を買ってあげるね」と言われた。

 

パティシエの響きがカッコ良いと思っただけの私は「遠いからいい」と断った。数年後、祖父が本当に秋田の土地を所有していた事を知ったが「遠いからいい」という気持ちは変わらなかった。しかも農場を持っていたのでヘクタール規模だった。遠いし広すぎるので私のような孫より牛さんに譲ってあげてよかったと感じる。

 

美容師も教師も諸々の理由(主に私の意志の弱さと適当さと親からの的確なダメ出し)で諦めて来た。諦めてきたと言うか、大体本気でも無かったのだ。

 

教員は本気だったが、本気の分だけ辛いことも知った。両親が教員だったので職場のことで病んでいく様子や実習での実状は忘れない。ダイナマイトで脳を爆破すれば全て忘れられるだろうがそんなことよりそのダイナマイトで実習中の担当教諭の家を爆破しに行きたい。

 

生徒や他の先生方はとても温かく受け入れてくれ最終的には楽しい思い出となっただけに、教育現場の底で渦巻く闇の部分がいっそう恐ろしかった。ダイナマイトで脳を爆破すれば全て忘れられるだろうがそんなことよりそのダイナマイトで実習中の担当教諭の家と車を爆破しに行きたい。

 

そんなしっちゃかめっちゃかな夢ばかりだったが、根底にあるのは『ほどほどに生きたい』という願いだったように思う。そしてそれは十分すぎるほど叶っている。

 

唯一諦めきれないものと言えば、やはりロールパンナちゃんの後継者となることだ。

 

ただし私がロールパンナちゃんになった場合は胸のハート(正義の心の時は赤・悪の心の時は青)が常時真っ青だろうし、青すぎて黒ずんでいる状態になっている気がする。これからは積極的にダイナマイトを用いて気に入らない奴の家と車と最寄り駅を爆破するなど善行に励み、正義の心を強固なものにして行きたい。